about

 

 

 

Latest News

2012/02/02
Hans H. Stein 「豚への大豆ミール」

2012/01/27
(271)新しい飼料添加物(パート2)
(272)有機酪農の可能性を探る米国北東部の大学

2012/01/18
日本の大豆マーケットレポート2011年12月号

 


WWW ASA IM

flecha サイトマップ

usa 英語

ホ-ム

 

プライバシーポリシー

 

大豆油の栄養および機能性について

藤原葉子博士(学術)
お茶の水女子大学生活科学部助教授
第4回食品大豆コンファレンス 2001/07/03

動 脈硬化や虚血性心疾患をはじめとする生活習慣病の予防には食生活が大きく関わっている。そのなかでも特に脂質の摂取量は日本人の食生活が豊かになるにつれ て増加し欧米に近づきつつあるため、近年栄養学の分野では摂取する脂質の量だけでなく質、すなわちどのような油をどれだけ取ればよいのかということが非常 に重要な問題となっている。大豆は良質の蛋白質を含むだけでなく、大豆蛋白自身がコレステロール低下作用を示すことやイソフラボン等の微量成分による生理 作用など、さまざまな機能を持つ食品としてあらためて注目を集めている。ここでは大豆油のもつ栄養学的価値について、脂質栄養の観点から述べたい。

 

脂質の構造と性質

脂 質はエネルギー源となる高カロリーの栄養素であるだけでなく、その他にも必須脂肪酸としての身体の調子を整える作用や、脂溶性ビタミンの吸収、輸送を助け る作用、またおいしさや満腹感に寄与する働きがある。特に必須脂肪酸としての役割は重要であり、油は我々が生きていく上で必ず摂取しなくてはならない重要 な栄養素である。
一般に我々が摂取している脂肪は中性脂質という形で3つの脂肪酸とグリセロールからなっており、その脂肪酸の種類によって油の性質が決まる。脂肪酸には飽 和脂肪酸と不飽和脂肪酸があり、不飽和、すなわち炭素の二重結合の数が一つのもの(オレイン酸など)をモノエン酸(一価不飽和脂肪酸)、2個以上のものを 総称して多価不飽和脂肪酸と呼ぶ。二重結合を多く含むほど融点が下がる、つまり融けやすくなるので飽和脂肪酸を多く含む動物性脂肪は固体であるのに対し、 不飽和脂肪酸を多く含む植物性油脂は液体である。脂質が体内に吸収され、生体膜の成分になったときには、不飽和脂肪酸が多いと生体膜の流動性があがるた め、細胞膜受容体活性や膜に結合する酵素活性の変動などさまざまな生体の機能発現に関与すると考えられている。一方で二重結合は酸化されやすいので、二重 結合を多く含む脂肪酸は酸化されやすく不安定であるという欠点もある。多価不飽和酸には二重結合の位置のちがいによりn-6系とn-3系の脂肪酸がある。

 

脂質の栄養学的意義

脂 肪酸は生体内に吸収されると、エネルギーを得るために分解される(β酸化)だけでなく炭素数を増やし(鎖長延長反応)、二重結合を増やす(不飽和化反応) を繰り返して代謝されていく。N-6系のリノール酸からはアラキドン酸、n-3系のリノレン酸からはEPA(エイコサペンタエン酸)とDHA(ドコサヘキ サエン酸)ができる。ヒトなど動物は飽和脂肪酸やモノエン酸のオレイン酸を合成することができるが、リノール酸とリノレン酸は作ることができないので、こ れらは食物から必ず摂取しなくてはいけない必須脂肪酸であ る。これらの必須脂肪酸が欠乏するとリノール酸欠乏では成長阻害、皮膚障害、生殖不全などが現れ、リノレン酸欠乏では皮膚、成長、生殖は正常なのに対し、 視力障害や学習能力低下などの神経系に対する影響が現れることが古くから知られている。しかし、リノール酸の必要量は摂取エネルギーの2-3%程度、リノ レン酸で1%、EPA、DHAでは0.5%程度なので、日本人の現状では不足することはほとんどない。欠乏による問題よりむしろ個々の脂肪酸のもつ生理活 性物質としての機能に焦点をおいてみよう。
必須脂肪酸である2種類の代謝出発物質、リノール酸とリノレン酸は同一の酵素によって代謝されていくが、両者が交差することはない。また、リノール酸から の代謝物DGLA(ジホモγ-リノレン酸)からは1シリーズのプロスタグランジン、アラキドン酸からは2シリーズのプロスタグランジンと4シリーズのロイ コトリエン、リノレン酸の代謝物であるEPAからは3シリーズのプロスタグランジンと5シリーズのロイコトリエンという生理活性物質(エイコサノイド)が できる。アラキドン酸からできるエイコサノイドは生理活性が強くこれらの中でも中心的な役割を果たしている。アラキドン酸由来のエイコサノイドが平滑筋収 縮作用、免疫反応の促進作用を示すのに対し、EPA由来のエイコサノイドはその逆の平滑筋の弛緩や免疫抑制作用や強い血小板凝集抑制作用をもつ。つまりこ の2種類のエイコサノイドのバランスによって生体は平滑筋の収縮(血管の収縮や血圧の調整)、免疫反応の強弱の調整を行っているため、これらエイコサノイ ドの原料であるアラキドン酸やEPAのバランスが重要になる。たとえば、EPAやDHAを多く含むアザラシなどを食べているグリーンランドエスキモーでは 血液が凝固しにくいので、血栓症や虚血性心疾患が少ないという疫学調査の結果や、過度の免疫反応によるアレルギーがリノール酸の多量摂取によるのではない かという指摘があげられる。
前述のようにリノール酸、リノレン酸の代謝は同一の酵素反応によって行われるので、両者の代謝は拮抗する。つまりリノール酸からアラキドン酸への変換はリ ノレン酸を摂取することで抑制でき、さらに拮抗阻害効果はn-3系のほうが強い。リノール酸からアラキドン酸への変換は、魚介類に含まれるEPAやDHA の摂取によっても影響を受けることや、アルコールや糖尿病、老化などさまざまな因子によっても進みにくくなることも知られており、これらすべてを考慮して n-6系とn-3系の脂肪酸をバランスよく摂取することとが重要である。現在の日本の栄養所要量では健康を維持するのにn-6/n-3比を4:1で摂取す ることを推奨している。

 

脂質の生理作用

脂 質は生体内機能を調節する重要な役割を持っており、その生理作用はコレステロール低下作用、血液凝固への影響、発がん、がん細胞増殖への影響、脳神経機 能、免疫機能の調節などがある。これらの作用がどのようなメカニズムで行われるかについては、エイコサノイドによるものだけでなく、最近では個々の脂肪酸 が直接遺伝子レベルで作用することもわかってきており、多くの研究がなされ注目を集めている。
個々の脂肪酸による生理機能は脂肪酸の種類によって異なっており、リノール酸は最も重要な必須脂肪酸であることやコレステロール低下作用が強いのに対し、 n-3系のEPAは強い中性脂質低下作用を持つことや血栓症の予防に効果があること、一方DHAは学習機能の向上など網膜や神経系機能の発達に重要であ る。Birchらによると生後5日以内の乳幼児に普通の粉ミルクとDHA添加粉ミルクを17週間与えて精神発育指標を調べると、DHA添加群で有意に向上 が見られるが、同時にアラキドン酸を添加すると精神運動発育指標ではさらに良い効果が得られた。DHAの摂取で頭が良くなるという点については、科学的な 根拠に乏しいのが現状であるが、網膜などの脳神経系機能に対する効果は報告が多く、その中でも乳幼児の成長に必須であるアラキドン酸の同時投与で好成績が 得られたことは興味深い。
オレイン酸は、オリーブ油を常用する地中海式沿岸地方では虚血性心疾患が少ないことから日本でもブームになった。リノール酸を多量摂取する弊害を懸念する 動きもあり、最近は植物油も品種改良などでオレイン酸の含量を増加する傾向にある。オレイン酸はリノール酸ほど強力なコレステロール低下作用は見られない が、リノール酸のように善玉のコレステロールもすべて下げてしまうのではなく、悪玉のコレステロールのみを下げる作用があることでも注目されている。ま た、オレイン酸はリノール酸やリノレン酸に比べると酸化されにくいため、動脈硬化の初期の形成に関わるLDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロー ル)の酸化変性が起こりにくい。さらにこの酸化変性を防ぐものとしてビタミンEなどの抗酸化剤の摂取が効果的であることも知られている。

 

多価不飽和脂肪酸摂取の問題点

脂 肪摂取が増加するとある種のがん(乳がん、結腸がん、前立腺がんなど)の発症が増加することが疫学調査から指摘されている。動物実験では飽和脂肪酸より多 価不飽和脂肪酸のがん発症率が高く、特にリノール酸はがん増殖作用をもつのに対し、n-3系脂肪酸は抑制効果をもつことから、リノール酸の摂りすぎに対す る警告がなされてきた。しかし動物実験の多くは発がん物質を与えてがんを発症する状況において多量の脂肪酸を投与した効果を見たものであり、疫学調査を大 規模に見直した結果から、現時点ではリノール酸が直接乳がんなどの発症を促進するという証拠は得られていない。
リノール酸を多量に摂取した場合に考えられる弊害として、免疫反応の刺激によるアレルギーへの影響がある。これは前述したプロスタグランジンなどのエイコ サノイドのインバランスによるので、n-3系の脂肪酸をバランスよく摂取することが重要となる。アレルギー症状は非常に複雑なので、すべての患者にn-3 系脂肪酸が有効であるわけではなく、n-3系脂肪酸を摂りすぎても免疫機能が抑制されるなどの悪影響がおこる。リノール酸は必須脂肪酸として最初に発見さ れた必須脂肪酸であり、すべての動物において生命維持に不可欠な脂肪酸である。現在の日本人の食生活において平均的な摂取量を守っていれば、過剰に摂りす ぎることはないので、むしろn-3系脂肪酸の摂取量が少なくならないことを心がけるべきであろう。
DHA摂取の時期は特に離乳期以前からの栄養が重要であり、我々の研究室で行った実験結果でも、脳のDHAは成長後にDHAを多くとってもほとんど変化が ないが、DHAを多く含む油を摂取した母親から生まれた仔ラットの脳内DHAは、n-3系の脂肪酸をほとんど含まないサフラワー油(SO)を摂取した母親 から生まれた仔ラットに比べて2倍に増加していた。脳や神経細胞へのDHA量を増加させるには、授乳期や妊娠期間中の母親のn-3系脂肪酸摂取が非常に重 要であることが明らかである。ただしn-3系の多価不飽和脂肪酸を多く摂取した場合には生体内での脂質過酸化を防ぐために、ビタミンE、Cなどの抗酸化物 質を多く摂取するよう注意する必要がある。
また先に述べた地中海式ダイエットによるコレステロール低下作用の主なものは、オレイン酸というよりはむしろオリーブ油に含まれる脂肪酸以外の微量成分の 効果によるものと考えられており、オレイン酸自身によるコレステロールの低下作用は培養細胞や遺伝子レベルでの実験ではリノール酸ほどの効果は見られな い。特に日本人ではリノール酸などの多価不飽和脂肪酸摂取が多いため、血中コレステロール低下作用は欧米でのデータほど効果が見られないようである。ただ しオレイン酸はLDLに多く取り込まれるので、酸化LDLの形成阻害効果が期待でき、抗動脈硬化作用を発揮できるかもしれない。


日本人の脂質摂取の現状と大豆油の栄養的価値

平 成12年に改訂された第6次栄養所要量では、脂質の摂取量を摂取エネルギーの20~25%、脂質の摂取割合は動物:植物:魚介類=4:5:1で飽和脂肪 酸:モノエン酸:多価不飽和脂肪酸=3:4:3、n-6/n-3比を4:1で摂取することを推奨している。1997年の国民栄養調査においても魚介類を含 む動物性脂肪と植物性脂肪はほぼ1:1となっている。動物性はいわゆる見えない油として摂取するものが大部分だが、植物性脂肪としてはその約半分が植物油 脂やマヨネーズなどのいわゆる見える油として摂取している。
脂肪の摂取量はこの25年間ではほぼ20~25%で推移しており、今のところ日本人は欧米のような40%近い脂肪摂取量にはいたっていない。多価不飽和脂 肪酸/飽和脂肪酸比も1であるが、欧米では依然としてこの比率が0.5である。N-6/n-3比は日本では現状においても4であるが、欧米では4~10を 推奨しながらも実質は米国で16、英国・北欧で15、オーストラリアで8など、これらの国ではこの比を5以下に下げることは事実上不可能なようである。日 本では欧米に比べると魚介類の摂取量が多いことに加え、植物油としてリノレン酸を多く含む大豆油やなたね油を多く使用していることが適正なn-6/n-3 比を保っている理由である。これだけをみると現在の日本の脂質摂取は欧米からみると理想的であるといえるかもしれないが、個々の脂肪摂取は非常に幅があ り、推奨量を満たしているのは全体の1/3程度に過ぎず40%近くの人が脂肪の摂りすぎであるとのデータもある。また食品群別摂取構成比ではそれほど大き な変化は見られていないが、年齢別の食品摂取量を見ると、魚介類の摂取は0-6歳から子供では少なく、魚介類/肉類の割合は高年齢者に比べると低くなって おり、低年齢層の魚離れは明らかである。低下したn-3系脂肪酸の摂取量を増やすためには、肉類摂取をへらすというだけでなく、見える油である植物油から のn-3系脂肪酸の摂取を心がける必要がある。
日本で使用されている主な植物油の脂肪酸組成を比較すると、大豆油はリノール酸、オレイン酸のほかにかなり多くのリノレン酸を含むという特徴がある。なた ね油もリノレン酸量が多いが大豆よりオレイン酸を多く含んでいる。従来のサフラワー油はリノール酸が多かったが最近はオレイン酸含量を増やした品種のもの が主流となり、現在市場に出回っているものはオレイン酸が70%、リノール酸は以前の1/5程度に減少し、リノレン酸はほとんど含まれていない。リノレン 酸を非常に多く含んでいるシソ油はかなり特殊な油で酸化安定性に問題はあるが、健康を意識して購入する消費者もいる。このような背景からすると、適正な n-6/n-3比を考慮した場合、大豆油は優れた脂肪酸組成を持っているといえる。
大豆油のもう一つの栄養的なメリットは抗酸化物質であるビタミンEの含量が非常に多いことがある。主な植物油の中でも最も多く含まれているため、リノール 酸やリノレン酸含量の高い大豆油の酸化を防ぐ効果がある。体内に吸収されたビタミンEは悪玉コレステロールに対する影響だけでなく、生体内でのさまざまな 酸化ストレスに対する防御作用があり、糖尿病やがん、老化の原因となる活性酸素を除去する作用がある。
食用とする油には味や風味もその価値を左右する因子であるが、アメリカ大豆にはさまざまな脂肪酸組成を改変した品種があり、その機能をふまえて利用の選択 肢が多い。特にこれまで述べてきた観点から健康を意識すると、リノレン酸の含量も多くリノール酸も適度に含み、飽和脂肪酸をオレイン酸に置き換えた低飽和 脂肪酸系の品種が特に優れていると思われる。油の安定性やリノール酸の摂りすぎの問題から、最近はオレイン酸を多く含む品種が多くなっているが、オレイン 酸は生体でも合成できる上肉類にも多く含まれており、現状でもすでに最も多く摂取している脂肪酸である。脂肪酸の摂取バランスを考えたときには、現状の多 価不飽和脂肪酸を減らさず、おいしく健康な植物油としての大豆油に期待したい。

 

US Soybean Export Council   Soybean Checkoff Supports U.S. Soybean Farmers - United Soybean Board

© Copyright 2008 U.S. Soybean Export Council. - Please read our Privacy Policy