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畑から食品となるまでの農産物の歩みを追跡
ジェイムス J. モック氏
Crop Verifeye 社
第3回 ASA食品大豆コンファレンス 2000/06/13
序論
農 作物の生産、穀物取扱および食品加工の複雑さは、近年劇的に増大しています。10年前、大豆生産者や穀物取扱業者の選択といえば、5-6種類の品種の選択 肢しかなく、その違いも主に収穫期と収量によるものでした。今日では、高収量の品種の選択の幅が拡大しただけでなく、除草剤に耐性をもつ品種や、高蛋白含 有種あるいは脂質の優れた品種の栽培及び取り扱いを行うか、あるいは日本の皆様はよくご存知の白目大豆や納豆用大豆のような特殊なバラエティ大豆の栽培 をするかどうかを、決定しなければなりません。さらに、単一の特性を有する品種、あるいはラウンドアップ・レディと高脂質や、ラウンドアップ・レディと高 蛋白、あるいはラウンドアップ・レディと白目など 様々な特性をもった品種の中から選択することもできます。明らかに、意思決定のこのレベルは、非常に複雑なビジネス環境を創り出しています。
大 豆のヴァリュー・チェーン(価値を生み出すのに貢献している一連の関係者)で生産者とは反対の端に位置しているのは、口にする食品についての知識を増やし てきた消費者です。世界各地の消費者はどのような原料で食品が製造されているか、原料に関する情報を要求しており、多くの場合、原料がどこで生産されたか を知ることを望んでいます。場合によっては、どの食品が最も体に良いかを見分けるために、製品に栄養情報を盛り込んだラベル表示を行うことも要求します。 もちろん、遺伝子組み換え(GM)問題により食品安全性への関心が増大し、消費者の意識と注意が高まりました。日本を含め、世界各国で食品表示に関する議 論の中心になっているのがこの問題です。これは、IP作物生産への関心を高めた問題でもあります。
農 作物の生産および食品加工の将来は一層複雑になると予想されます。新穀のパイプラインはいくつかの注目すべき農産物 -その大半は遺伝子組換え技術により開発された農産物 -で溢れています。こうした新しいタイプの農産物は、蛋白質の質や量が高められていたり、脂質の含有量が高められていたり、アレルギー誘発物質が取り除か れていたり、ニュートラスーティカル(neutraceuticals: 健康を増進させる成分)を持っているなどの特性が提供されたりしているため、今日市場に出回っている農産物とは大きく異なります。大豆だけでも、今後 4-6年以内に改良種に導入されるであろう新しい特性が5つあります(表1)。大豆生産システムに、こうした品種がもたらす新たな複雑さがどの程度かを想 像してみて下さい。
こうした新製品は世界的に販売され、人間の健康、栄養 および消費者の食の嗜好によい意味で影響を与えるため、「改善された」あるいは「ヘルシーである」などの食品表示を行うことにおいて、主導的役割を確立す ることが、食品製造者にとって重要になるでしょう。「表示を優先させる」立場をとる企業が必ずマーケティングにおいて優位になるでしょう。すなわち、プロ セス(過程)の確証や産物の生産・流通経路のトレーサビリティにより裏付けされているIPは、この新しいビジネス環境において必須条件となりましょう。し たがって、21世紀の始まりとともに、「商品、コモディティの時代」から作物および穀物生産の「選別品/IPの時代」に移行することは明らかです。
本 論文では、IP作物生産システムに使用されるトレーサビリティ(追跡)・品質の厳密な検査システムについて論じます。このシステムは今日のグローバルなビ ジネス環境のニーズを満たすISO9000フォーマットに基づいており、電子的に相互接続された(インターネット等で繋がれた)世界の利点を活用していま す。
IP環境
「選 別品/IPの時代」が成熟すると、食品製造プロセスに関する決断同様、食品原料が入手可能かどうかに関する事業決定を、リアルタイムでアクセスできる世界 的な情報源に基づいて行うことが不可欠になります。このような要求は、電子メディアやインターネットを利用した情報システムの活用によって初めて満たすこ とができます。
さらに、IPでは、生産者と最終加工業者との間で交渉された生 産契約に基づいて作物を栽培することが必要とされます。こうした契約では必要な作物品種など、望ましい高品質の最終製品を生産するのに必要とされるプロセ ス仕様が明確に述べられています。こうしたシステムでは、IPおよび遺伝子情報のトレーサビリティにより生み出される価値が、ヴァリュー・チェーンを構成 している全てのメンバー間で平等に分配されることが必要です。IP栽培をすることにより生産物の高められた価値の分配が行われなければ、生産者は余分の時 間や労力をかけて穀物や野菜作物を分別して栽培することを望みません。生産者がそうしたシステムに熱心に取り組むために、生産コストにプラスした正当な割 増し金(プレミアム)を生産者は要求します。ヴァリュー・チェーンの他のメンバーも、様々な作物を分別管理し、IP作物のトレーサビリティを保証するため に費やさなければならない余分の労力に対する報酬として、高められた価値の公平な分配を必要とします。ヴァリューチェーンを構成しているそれぞれが報酬の 増加を必要とするため、農作物の品質に対する期待や規格、食品製造に使用されるプロセスは劇的に増大するでしょう。
最 終的に、厳格な認証・トレーサビリティのシステムが確立している場合にのみ、増大した価値があることが確証されます。したがって、IPシステムには、特定 の契約条件に基づき栽培された穀物あるいは野菜の品質および遺伝子情報を確認する、「畑から食品」にいたる第三者による追跡(トレーサビリティ)システム が必要になるでしょう。
「畑から食品」のトレーサビリティ(追跡の可能性)
全てのトレーサビリティとオーディティング(厳密検査)プログラムには、次の主要な3要素が盛り込まれることが不可欠です。
各契約に関係している作物生産者および加工業者による徹底的な記録保持およびデータ入力
簡単にアクセス可能でユーザーフレンドリーな(使い勝手の良い)完全かつ正確なデータベース
各生産契約で述べられている全ての重要なプロセスポイントに関し、偏りのない現場重視のやり方による検査検討
さ らに、このシステムには、適正な農耕関連データの管理だけでなく、遺伝子および品質の検査データを正確に記録可能にする畑でのデータ収集技術が必要です。 非常に複雑で、競争が激しくかつペースの速いビジネス環境では、重要な決断をするのに必要なあらゆる承認済み情報や報告をリアルタイムでアクセスできるこ とが、最も重要です。
作物並びに穀物のトレサービリティ・システムは、現 在すでに利用できる状態になっており、完全に機能しています。このシステムは国際標準化機構(ISO)が開発したISO9000シリーズの品質認証プログ ラムに相当するシステムです。簡潔に説明すると、このプログラムには、契約をしている買い手と生産者が、特定の契約作物の生産計画の各重要ポイントで測定 されるプロセスおよび品質パラメーター(要因)について合意するための会合を持つことが含まれています。(筆者が重要と考える11の一般プロセスポイント を表1に要約)。その後、生産者は各プロセスポイントに対して、データベースに適切なデータを入力します。データは収集と同時に入力され、インターネット を通じて提供可能なため、世界中どこででも契約栽培地の状況についてリアルタイムで情報を提供することができます。たとえば、契約上の買い手である東京の 食品原料会社は、データが入力された直後にこのデータにアクセスでき、即座に作物の状況を確認することができます。
十 分な訓練を受けたの現地検査員が生産者の現場を訪問し、各プロセスをチェックします。生産者のデータを確認し、契約の明細規定に一致しているかどうか確認 します。検査データは全てノートブック・コンピュータで収集され、モデムを通してデータベースにダウンロードされます。ここでも、契約生産物に関係する全 ての個人が、リアルタイムで、世界中どこからでもデータにアクセスできることが保証されています。工程で使用される畑、機器、貯蔵所、運搬車両それぞれに 適切な完了済の印を貼付することにより、検査の完了が確認されます。
この システムは柔軟性があり、種子生産農場、穀物生産システム、作物貯蔵施設および輸送機能ならびに食品製造プロセスを検査・追跡する能力を有しています。こ のシステムは、穀物あるいは野菜作物や最終製品を、地球規模で「畑から食品」まで追跡することができます。現在このシステムに取り込まれている作物を表2 にリストします。
まとめ及び結論
農 業関係者はほぼ全員、今後、「複雑さ」が作物生産および食品加工を表現するキーワードになるという見方で一致しています。「商品、コモディティの時代」は 明らかに「選別品/IPの時代」に移行しており、我々の作物および食品システムは、製品品質の向上と増大した価値の獲得に対する要求が始まっています。
遺伝子情報のトレーサビリティ(追跡可能性)は、あらゆるIP生産計画に おいて重要な要素になります。偏りのない現地検査システムの確立がなければ、生産物の品質やプロセス遵守に関する疑問が浮上し、ビジネス上、深刻な問題を 引き起こす可能性があります。リアルタイムの検証および追跡サービスはインターネットを通じて現在提供されており、世界的な規模で作物を「畑から食品」に 至るまで追跡することが可能です。
「複雑さ」が今後の作物および食品生産業界を表現するために使用されるキーワードになると予想されますが、「トレーサビリティ(追跡可能性)」は、いかに業界が競争に勝ち残り、サプライ・チェーン全体を通じて様々な製品の価値を高めるかを説明するでしょう。
表1. 今後4-6年以内に商品化の可能性のある大豆の特性
| 特性 |
潜在的な用途 |
| 高ペルオキシダーゼ |
ベーキング、医療用診断 |
| 高サッカロース(蔗糖) |
牛乳の消化 |
| 高オレイン酸油 |
風味の安定、飽和脂肪の含有量が低いことから心臓疾患およびガンに有効 |
| 高ステアリン酸油 |
安定性の高い液体ショートニング、ヘルシーなマーガリン |
| 高ステアリン酸・オレイン酸油 |
固形マーガリン製品、健康に良い |
出 典:P.S. Kerr著『Development of New Food Products Using Biotechnology, Meeting the Challenge to Deliver Benefits to Consumers』1999年GMO Foods Conference、ワシントンD.C.
表2.作物及び穀物追跡システムで現在扱われている作物
- 大豆
- コーン
- 小麦
- 大麦
- カノーラ
- 綿花
- ピーナッツ
- トマト
- ジャガイモ
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