カノーラ・ミール(菜種粕)が産卵鶏に及ぼす難しさ
養 鶏飼料にカノーラ・ミールを使うケースは増えていますが、魚臭や卵のサイズが小さくなるなど思わぬ難しさも呈しています。以前の菜種粕には、栄養上の「内 因性毒性」問題があったことで評判が悪かったのですが、現在のカノーラ・ミールと呼ばれる改良された「ナタネ粕」は、以前の菜種が含有していたエルカ酸と ゴイトロゲンがほとんどありません。現在では、エルカ酸はゼロに近くなり、ゴイトロゲンの通常のレベルも20μg/gまで落ちています。そうはいってもカ ノーラ・ミールには低いとはいえ、ゴイトロゲン活性が残っていますから甲状腺の重量が増えてしまいますが、産卵鶏などの成績に影響を与えるほどではありま せん。
また、カノーラのタンニン含量はかなり高く、系統によっては最大3%というのがありますが、そ れが産卵鶏などに対してカノーラ・ミールの蛋白質の利用を下げるほどの影響は持っていないという報告があります。ただ、カノーラ・ミールには1.5%とい うかなりの量のシナピンが含まれているという面があります。シナピンは白玉を産む産卵鶏の大部分のクラスには問題を起しませんが、赤玉を産む(ブラウン・ エッグ)産卵鶏のかなりの割合は、卵に魚臭いといわれる嫌な臭い(オフ・フレーバー)が出てしまいます。これはカノーラ・シナピンが赤玉系の鶏に与えられ たときに顕著に出るものです。シナピンが腸管内で分解される最終過程でトリメチルアミンにも変わりますが、この物質が卵に魚臭をつけてしまいます。今日の 赤玉を産む産卵鶏の系統には多くはありませんが、トリメチルアミン・オキシダーゼを持たない鶏がいます。その場合、卵にトリメチルアミンが出てしまうので すが、僅か1%のシナピンしか含んでいないカノーラでも嫌な臭いが出ます。ただ、赤玉を産むブロイラー用種鶏の卵はカノーラ・シナピンの影響を受けませ ん。
確かに北米の飼料産業界はカノーラ・ミールという植物油粕を受け入れましたが、時折、ブロイラー や七面鳥などの脚の問題が報告され、産卵鶏の卵のサイズが小さくなることも報告され、場合によっては、配合飼料中のカノーラ・ミールの割合が高いと肝臓出 血が増えることが報告されています。脚の問題が出るのはカノーラ・ミールと大豆ミールのミネラルのバランスが違うことによるとも指摘されています。カノー ラはフィチン酸が高いので亜鉛の利用に変化を起させ骨の成長に良くない影響を与えると見る向きもあります。
カ ノーラ・ミールを与えたときに卵のサイズが小さくなるという報告がありますが、それは飼料摂取量の低下によるものであると推察されます。このような理由か ら、若い産卵鶏に対しては、飼料摂取がほぼ横這いになるまでは、カノーラ・ミールを与えることを制限したほうがよいと忠告しています。
近 年、カノーラ・ミールに含まれる硫黄のレベルが高いことが脚の問題と飼料摂取の低下に絡んでいるのではないかという指摘があります。確かに、カノーラ・ ミールには1.4%の硫黄が含まれており、大豆ミールの硫黄のレベルが0.44%という低さとは対照的です。加えて、大豆ミールに含まれる硫黄の最大 75%は、含硫アミノ酸に貢献しているものですが、カノーラ・ミールの硫黄は僅か20%程度のみが含硫アミノ酸に使われます。飼料中の高レベルの硫黄は、 腸管内のカルシウムと結合してカルシウムの排泄が増えるという報告があります。このことで、カノーラ・ミールのカルシウムの有効性が下がるのではないかと いうことを示唆した報告も納得できるもので、恐らく、脚の問題も増えるであろうと云えます。
余談ですが、前述の毒性ダブル・ゼロと言われるカノーラ・ミールについてのコメントはカナダ・ゲルフ大学の世界的に高名なリーソン教授とサマーズ名誉教授 がコマーシャル養鶏(第三版)などでも指摘していることです。因みに、日本では以前からナタネ粕と呼ばれていますが、現在使用している日本標準飼料成分表 にはナタネ粕と書かれ、末尾にはカノラ主体と書かれています。大豆同様にカノーラは遺伝子組み換え植物油種子で、菜種油を生産した後のミールは日本の飼料 業界にも蛋白質副原料として使われていますが、指摘されているような問題もあります(瀬良、2008)。 |