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瀬良英介ニュースレター

瀬良英介の一般業界向け
飼料・畜産トピックス
2008年3月 (179)

 

豚肉の脂肪交雑は豚ロースの食味の質にほとんど影響なし

イ リノイ大学畜産学部と食品科学・人間栄養学部のP.J.リンカーを含む5人の研究者グループは豚筋肉中の脂肪交雑がロース・チョップの食味の質にほとんど 影響を与えないことを報告していますが、日本では興味のある内容ですし、米国と日本の消費者の間に理解の違いがあるので簡単に結論などを御紹介しましょ う。

コマーシャル・パッキング施設から豚生肉のロース部分290本を主観的に脂肪交雑具合で選び、貯蔵 24時間目のpHも選び、脂肪交雑(マーブリング)が感覚・知覚的な帰属要因に与える影響を調べています。この研究に選んだ豚は遺伝的なバックが似通って おり、飼育施設が似通っており、また、同じ日に屠殺されたものです。このようにして遺伝、管理、環境、及び、屠殺日を合わせることでそれぞれの影響を最低 限にするようにしています。

ロースは真空パックにしてイリノイ大学の食肉科学ラボに輸送し、そこで7日間 熟成をかけ、第10番目肋骨辺りからロース・チョップを分析のために取り出しています。品質測定に関しては、全米養豚生産者協議会(NPPC)の色、脂肪 交雑、肉の締まりを測定し、最終的なpH、ミノルタL*、a*、b*、、ドリップ・ロスは熟成をかけた後で測定しています。

   測定値が出た後、ロース150本は連続的、且つ、抽出脂質の均一分布(幅、1~8%)、及び、pH(幅5.5~5.8)を見るために選ばれています。訓 練を受けた感覚・知覚パネリストによる測定は150枚の豚ロース・チョップを芯の部分での調理温度が62℃、71℃、80℃について行い、切り取る強さは ワーナーブラッツラー剪断測定器を使い71℃で調理したロース・チョップについて行っています。

  消費 者による評価はロースのサブセット(部分集合)(40枚)で行っていますが、それらは筋肉中の脂肪交雑が平均抽出率で1.6%、2.5%、3.6%、 4.5%、及び、5.7%に分けられています。また、消費者に更に頼んだことは店頭のショーケースから選んで買うとき、肉の脂肪交雑の度合いでどのロー ス・チョップを買うかを選んでもらいました。

  消費者による選択調査の部分が示したことは筋肉中の脂肪含量は知覚認識される軟らかさ、ジューシネス、豚肉のフレーバー、及び、油っぽさについて限定的な影響が僅かしかなく;若干有意な差(p<0.05)は検知できましたが、数値としては小さなものでした。

  加えて、大部分の消費者が店頭ショーケースから選んだロース・チョップについては、その50%近くが1.7%以下の抽出脂質のものでした。ワーナーブラッツラー剪断測定値は抽出脂質とは負の関係にあり(p<0.0001)、R2値は0.10でした。

  訓練されたパネリストの感覚・知覚分析値から得られたことは、抽出脂質%は、知覚認識できる軟らかさ、ジューシネス、或いは、豚肉のフレーバーに関して、遺伝、pH、管理、屠殺日を合わせたこのグループの豚ロースについては強い相関が無いことを示しています。

   訓練されたパネリストの軟らかさについての判定は一次回帰で15センチ・ラインスケールを使い、0=非常に硬い、15=非常に軟らかいとしています。 ジューシネスについては一次回帰で同じスケールを使い、0=非常に乾いている、15=非常にジューシー(肉汁が多い)としています。豚肉のフレーバーにつ いては、一次回帰で同じスケールを使い、0=豚肉のフレーバーが全くない、15=強い豚肉のフレーバーとしています。

   人口を代表している消費者パネルは簡単に60%が女性、40%が男性です。また、パネルの構成比率は20%がアジア系、9%がヒスパニック系、3%がア フリカン・アメリカン(アフロ・アメリカン)64%が白人(非ヒスパニック系)、2%がその他です。年齢は18歳から59歳の幅があり、グループの53% が学生でした。パネリストは豚肉を平均して週に2回食べています。

  この報告から判ることは脂肪交雑(マーブリング)が食味の質や食べたときの食感、また、噛みごこちに対して影響を与えないということを一系統内の遺伝やウエルダンの状態まで調理した豚ロースについていえることを示しています。

   興味ある点は、研究者グループは報告のなかで、米国からの輸出用豚肉に対して日本や韓国は、そして、フードサービス事業関係からの強い要請は、脂肪交雑 の多い豚肉を供給して欲しいという点を指摘し、脂肪交雑のみを購入の判断基準にするということは美味しい豚肉が食べられることを保証するこにはならないか もしれないとしている点です。

  論文は表5点、図5点からなる8ページの報告ですが、詳細に興味のある方は米国畜産学会誌(J.Anim.Sci. 2008. 86:730-737)を参照なさることをお勧めします。

   余談ですが、研究者グループがいみじくも指摘している脂肪交雑と食味の質にはほとんど影響が無いとする結論は、この研究手法で云々するかぎり間違ってい ないでしょう。ただ、個人的には、一般論として脂肪交雑と肉の旨みや食感には関係があると思います。例えば、脂肪交雑による軟らかさもさることながら、豚 肉の脂肪そのものの甘さや旨さというのは個人的には否定できません。現在の風潮では、脂肪を避け、脂肪交雑のない豚肉を買う傾向が日本にも出てきているの も事実です。面白いのは、本研究の消費者の購買傾向でも脂肪交雑のないリーンな赤身肉を買う傾向があるという一面も指摘されている点です。

本 報告の中でパネルが米国内の人種をそれぞれ代表するこになる点も指摘されていますが、これなども白人、ヒスパニック系、アフロ・アメリカン、アジア系など もそのパネリストの過去の生活内容が一定ではありませんから(過半数が学生であるということ以外)、人種以外の好みの傾向は考慮されていません。このよう に一つのテーマを研究する場合、当然のことながら、ある条件設定の範疇で行い、その範疇での結論はかくかくしかじかという展開と結論になります。ですか ら、研究テーマや内容によっては行間を読み、一般社会での考えを重ね合わせて「誘導」するというのは正しくありません。

   私がこの報告で一番関心を覚えた部分は、論文のディスカッションの一部で研究者が指摘した前述の部分、すなわち研究者グループは報告のなかで、「米国か らの輸出用豚肉に対して日本や韓国は、そして、フードサービス事業関係からの強い要請は、脂肪交雑の多い豚肉を供給して欲しいという点を指摘し、脂肪交雑 のみを購入の判断基準にするということは美味しい豚肉が食べられることを保証するこにはならないかもしれない」、としている点です。後は、読者の判断に任 せます(瀬良、2008)。

 

 

 

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