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瀬良英介ニュースレター

瀬良英介の一般業界向け
飼料・畜産トピックス
2007年7月 (164)

 

授乳期子豚の性別飼育とリジンの評価

米国の州立大学(カンサス、ケンタッキー、ミシガン、ミネソタ、オハイオ、南ダコタ)6大学がNCCC-42 豚委員会のメンバーとして協力し、授乳期間前後の子豚の性別飼育とリジンの評価を行いました。

結論を簡単に申し上げますとナーサリー(授乳期間前後)子豚用飼料のリジン濃度を上げていくと雄雌の性別に関係なく子豚の成績は改善されており、この段階で雄雌を分けて飼育する利点はないというものです。

養 豚生産の中で過去10年ほどの間で最も画期的な飼養方法として多くの養豚生産経営者に受け入れられているのは肉豚の育成・肥育期間(グロー・フィニッシュ 期間)に雄雌を分けて飼育することでした。それは成長速度、飼料効率、また、恐らく異なる栄養要求量が若メスと去勢豚について違うからであると指摘されて います。

然し、授乳・離乳前後の子豚の飼育方法には色々な方法が提案され実践の場で使われているのにもかかわ らず、子豚を雌雄に分けて飼育する方法については充分な評価をしていません。本報告のオハイオ州立大学・メイハン教授を含め計6大学の教授・研究者が報告 している授乳期(ナーサリー)子豚の性別飼育とリジンの評価には関心が高い養豚生産者や飼料・普及関係者もおられると思いますので、一部を簡単に御紹介す ることにします。

この研究の目的(1)は、若メスと去勢豚が離乳後(哺乳打ち切り後)に給与飼料蛋白質の一つリジンを上げたことに対してどちらも同じような反応を示すかどうかです。目的(2)は、現在のNRC豚の栄養推定要求量がリジンに対して充分であるかどうかです。

大 学の養豚試験場6ヶ所(カンサス、ケンタッキー、ミシガン、ミネソタ、オハイオ、南ダコタ)で計748頭の子豚(体重が6.7kg、日令が19.4 日±1.1日)を使って試験をしています。子豚は四つの処理区、32回反復(ペン当り5~7頭)のランドム・コンプリート・ブロック法で行っています。

子 豚は若メスと去勢豚に分けてペンに入れ、ナーサリー用子豚配合飼料を3フェーズに分けて給与しています。フェーズ(1)が1日令~7日令、フェーズ(2) が8日令~21日令、フェーズ(3)が22日令~35日令です。リジンはNRC豚の栄養推定要求量で与える区とNRCよりも0.20%高めに与える区をそ れぞれフェーズ(1~3区)に与えています。したがって、飼料中リジンはフェーズ(1)では、1.35%に対して1.55%、フェーズ(2)では、 1.25%に対して1.45%、フェーズ(3)では、1.15%に対して1.35%です。

子豚と飼料は試験開 始前とそれぞれのフェーズの終わりに測定しています。結果が示すことは、各フェーズ、或いは、35日の全試験期間を通して性別による平均増体日量 (ADG)、平均飼料摂取日量(ADFI)、或いは、飼料効率(増体:飼料、G:F)の違いはありませんでした。つまり、去勢豚と若メスそれぞれのADG が453対452g/日、ADFIが674対675g/日、G:Fが0.673対0.671です。

リジン濃度 を上げた飼料区はNRC豚の栄養推定リジン要求量の飼料を与えた区に比べ、フェーズ(3)ではADGが改善され(628対589g/日、 P<0.001)、全体ではADGが改善されています(465対441g/日、P<0.001)。リジン濃度を上げた飼料区では、フェーズ(2)で ADFIが増えましたが(P<0.05)、他のフェーズ(1と3)と全体で35日間の試験区ではそうなりませんでした。飼料効率(増体:飼料、G:F)は リジン濃度を上げた飼料区ではフェーズ(2)で改善があり(0.785対0.704、P<0.001)、また、全体の35日間でも改善がありました (0.695対0.649、P<0.001)。

性別 × リジンの相関関係の可変反応は、いずれのフェーズ(1~3)区においても全体で35日の区においても認められませんでした(P = 0.33)。この研究者グループの結果では、ナーサリー子豚用飼料中のリジン濃度を上げた場合、子豚雌雄双方に対してパーフォマンス(成長成績など)が改 善され、ゲノタイプが混ざっている場合のナーサリー段階では性別を分けて飼育する利点は無いように見受けられるとしています。

混 合ゲノタイプは6大学の試験場の飼育豚の遺伝タイプが違うことを指しています。それは、PIC 327 × L 42、(Y × L)× D、或いは、Y × D、Y × D、GAPカナダ、(Y × L) × PIC、AusGene Internationalです。関係者は周知のことと思いますが、PICはPIC International、Yはヨークシャー、Lはランドレース、Dはデュロック、GAPはカナダの遺伝的に進歩した豚、AusGeneはオーストラリ アで開発した遺伝系列の豚を指しています。

試験飼料設計より部分掲載

 

フェーズ(1)

0-7日令

フェーズ(2)

8-21日令

フェーズ(3)

22-35日令

原料名 %

NRC

NRC+0.2%

リジン

NRC

NRC+0.2%

リジン

NRC

NR+0.2%

リジン

とうもろこし

41.58

38.09

54.03

50.52

60.88

57.38

大豆ミール CP48

9.06

9.05

17.31

17.30

28.93

28.92

大豆蛋白質・コンセントレート

4.00

4.00

2.00

2.00

---

---

乾燥動物性・プラズマ

5.00

5.00

2.00

2.00

---

---

リジンHCL

0.10

0.10

0.10

0.10

0.05

0.05

DL-メチオニン

0.07

0.07

0.10

0.10

0.05

0.05

*残りは、ホエー、ラクトース、ミネラル・ビタミン・プレミックス類、食塩、油脂、抗菌剤など

*フェーズ(1)NRCのリジン=1.35%、 (2)NRCのリジン=1.25%、(3)NRCのリジン=1.15%、NRC豚=1998

*乾燥動物性プラズマ= APC-920, American Protein Corporation, Ames, IA

表 4点を含む6頁の論文は興味深い内容ですが、要点は上記で紹介した通りです。詳細に関心のある方は、米国畜産学会誌(J. Anim. Sci. 2007. 85:1453-1458)を参照なさることをお勧めします。ビタミンやミネラル・プレミックス類の内容は大学によって異なりますが、添加レベルは、 NRC豚(1998)のレベルと同等かそれ以上に混入されています。

余談ですが、本報告は6州立大学の試験場 が協力していると御紹介しました。これらは、以前の日本の国立大学にやや相当しますが、歴史的経緯は完全に異なります。その詳細は、過去の拙稿でも紹介し ましたので割愛します。また、実際には、この試験が行われていたときのNCCC-42豚委員会の会員大学は、他にも8大学ありました。それらは、オクラホ マ州立大、パーデュー大、ウィスコンシン大、テキサス工科大、ネブラスカ大、イリノイ大、アイオワ州立大、ミズーリ大の8大学です。他の研究論文では、こ の8大学が委員会を代表して報告しているものもあります。

この報告の配合設計にもあるように子豚も授乳中、或 いは、人工乳の哺乳中から離乳直後(哺乳打ち切り直後)の特殊な配合飼料にも脱皮大豆ミールのように嗜好性が高く必須アミノ酸などの組成が良いものを相当 量使うことが一般的なことです。加えて、DL-メチオニンやリジンHCLの添加も全体の必須アミノ酸バランスの中では相応に行われているのが一般的です (瀨良、2007)。

 

 

 

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