イラン・ブロイラーの大腸菌耐性と抗生物質
イランのバギヤタラ医学大学とテヘラン大学医学部、ヴァイロ・メッド・ラボ微生物部の研究者4名が自国の養鶏の大腸菌問題を調べた興味ある報告がありますので、一部を御紹介しましょう。ブロイラーから検出された大腸菌の抗生物質に対しての耐性は日本を含む先進諸国でも関心のあることです。
エシェリヒア・コリは、E.coli(大腸菌)のことですが、米国ではイー・コーライと発音する場合が多い病原菌です。世界中のコマーシャル養鶏や七面鳥生産の現場で相当な経済損失をもたらしていますので何れの国も関心が高いのです。ブロイラー生産現場でエシェリヒア・コリ感染症の疑いがある135検体を調べ、隔離培養をすることで大腸菌の抗微生物感受性評価を2005年1月から2006年12月行いました。103検体(76.3%)からは大腸菌が分離され、32検体(23.7%)からは大腸菌の成長は認められませんでした。
全ての分離体について複数の耐性が認められました。全ての分離体が均等に示した耐性はティアムリン (Tiamuline)、タイロシン (Tylosin)、及び、バシトラシン (Bacitracin) でした。低いレベルの耐性はゲンタマイシン (Gentamicin)(12%)、カナマイシン(Kanamycin)(0%)、フロルフェニコール (Florfenicol)(39%) に認められました。
ティアムリン (Tiamuline)、バシトラシン (Bacitracin)、タイロシン (Tylosin)、コリスティン (Colistin)、エリスロマイシン (Erythromycin)についての耐性割合は99%かそれ以上(≧99% ) でした。テトラサイクリン (Tetracyline) は96%、オキシテトラサイクリン (Oxytetracycline) は93%、フロメクィン(Flomequine) は87%、ネオマイシン (Neomycin) は87%、リンコスペクティン(Lincospectin) は79%、ダイフロサシン (Difloxacin) は78%、ユーロフロサシン (Eurofloxacin) は76%、コトリモサゾール (Cotrimoxazole) は72%、クロラムフェニコール (Chloramphenicol) は52%、そして、アンピシリン (Ampicillin) は49% であると分かりました。我々のデータからはイランの大腸菌分離体から複数の高い耐性があることが示されました。養鶏産業に臨床的にも重要な抗生物質の細菌耐性はモニターされる必要があると思われます。
アミノグリコサイド(Aminoglycosides) のカナマイシン (100%) やゲンタマイシン (88%)、或いは、フロルフェニコール (61%) は感受性が優れていますが、カナマイシンやゲンタマイシンはイランの養鶏産業では極めて新しい抗微生物剤だからです。イランではゲンタマイシンは注射のみの方法しかないのですが、それには注射が出来るように訓練されたチームが必要になり経費がかかりすぎます。したがって、現場では経費と技術両面から使い難いので中々使わないでしょう。
検体総数が135検体ということはイラン全土のコマーシャル農場から集めた大腸菌感染症の疑いがある135羽のブロイラーのことです。イランの研究者は同様の調査が米国や欧州で行われた結果と比較してもイランの検体のほうが耐性が相対的にあると指摘しています。研究者は懸念すべきこととして、抗生物質・抗微生物剤をむやみに使い、また、予防という観点からも抗生物質・抗微生物剤を安易に使っていること、不十分な処置、そしてイラン養鶏業界の検疫施設が損なわれている点などを挙げています。
報告は イランのB. Pourakbari を含む計4名からなる表1点をつけた短い論文ですが、詳細に関心のある方は米国家禽学会誌 (J. Appl. Poult. Res. 2008. 17:302-304) を参照なさるとよいでしょう。
余談ですが、日本でも一時期は抗生物質をやみくもに使っていた時代があります。現在では必要に応じて使われていますが、どの程度に適切であるかということについては現場担当者、学者、獣医、医者、食品製造・販売関係者、消費者などによって見解が分かれるかもしれません。やはり抗生物質の感受性調査は日本でも国全体で定期的に継続して行うか、或いは、養鶏業界全体が自主的なリスク管理の一つとして行うのがよいと思います。何かが起きたときに想定外な出来事であると安易な釈明をしないで済むようにハードルは高めに設定するのがよいと思います。そうでないと人間が細菌感染疾病にかかったときに効果的な治療に使う抗生物質の数が減り、使用処置量の点でも難しさがでてきます。結果として養鶏や畜産用の抗生物質を開発しながら、人間用の新しい抗生物質の開発を今までよりスピードをあげて続けていかなくてはならないイタチゴッコになるからです(P良、2008)。
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