アメリカ大豆協会

瀬良英介ニュースレター

瀬良英介の一般業界向け
飼料・畜産トピックス
2008年6月 (185)

亜鉛添加とブロイラー飼育

 インドの研究者7名が亜鉛添加のレベルを上げることでブロイラーの成績、ミネラルの利用性や免疫向上、ストレス軽減などがどうなるかについて調べた報告があるので一部を御紹介しましょう。

 結果としては、ミネラル保持、免疫反応、ストレス軽減などを良い状態にするのにはブロイラー4週令まで80ppmの亜鉛添加が必要だとするものです。

 この試験は210羽と140羽のコマーシャル用1日令雛を使い、それぞれ亜鉛添加による成績への影響、ミネラルの有効性(試験1)、及び、免疫反応(試験2)を4週令まで調べています。基礎飼料はとうもろこし・大豆ミールで組み立てられていますが亜鉛は添加していません。

 試験用飼料は6種類用意され、基礎飼料に亜鉛を10, 20, 40, 80, 160,或いは、320ppm添加していますが、添加亜鉛は硫酸亜鉛・7水(ZnSO4/7H20)です。試験と対象区用基礎飼料はケージ飼育のブロイラー8週令から28週令に不断給餌で与えています。

 添加亜鉛は4週令時点での体重増加、飼料摂取量、飼料効率、調理用肉歩留まり、脚のスコア、或いは、脛骨の灰分に変化を与えていません。脛骨の灰分が有意に低かったのは添加亜鉛レベルが320ppmのときのみでした。脛骨のカルシウム%とリン%は亜鉛添加が試験1と試験2それぞれ80ppm、及び、40ppmレベルまで増え、それから後は減りました。亜鉛添加は亜鉛蓄積が骨、肝臓、腎臓に直線的に増えました。体液と細胞に介在する免疫反応は80ppmレベルがそれより低いレベルに比べて有意に高かったです。偽好酸球(heterophil)対リンパ球(lymphocyte)比は狭かったのですが、それは亜鉛添加レベルが40ppmかそれ以上であるとストレスが少ないということを示しています。囊(包)と脾臓の重量は亜鉛添加レベルが40ppmかそれ以上で重かったです。

 この試験では基礎飼料の亜鉛(29ppm)はブロイラーの適切な能力を支持するのに充分であったと云えます。前述のように基礎飼料には亜鉛を添加していませんから、とうもろこし・大豆ミールなど基礎飼料原料に含まれる亜鉛レベルのことです。より良いミネラルの保持、良い免疫反応、ストレスの軽減には80ppmの亜鉛レベルが4週令まで必要でした。

 基礎飼料の配合設計の主な部分は次のようなものです。黄色とうもろこしが59.55%、大豆ミールが35.00%、第二リンカルが1.70%、粉砕貝殻が1.80%、食塩が0.50%、塩化コリンが0.26%、dl-メチオニンが0.26%、ビタミン・プレミックスが0.04%、微量ミネラル・プレミックスが0.10%、抗コクシ剤が0.05%、抗生物質が0.05%、澱粉が0.69%です。配合設計中の澱粉は硫酸亜鉛・7水を使って亜鉛を0から320ppmの試験飼料を作るのに重量ベースで置き換えるように入れてあります。

 栄養組成は計算ME値としての代謝エネルギーが2,878kcal/kg、分析値した粗蛋白質が22.05%、リジンが1.19%、メチオニンが0.50%、分析したカルシウムが1.09%、分析した非フィチン態リンが0.45%です。これはNRCで推奨している亜鉛レベル40ppmの2倍です。

 ビタミン・プレミックスは1kgの飼料に対してビタミンAが16,500IU、ビタミンD3が3,150ICU、ビタミンEが12mg、ビタミンKが2mg、ビタミンB1が1.2mg、ビタミンB2が10mg、ビタミンB6が2.4mg、ビタミンB12が12μg、ナイアシンが18mg、パントテン酸が12mgです。ミネラル・プレミックスは1kgの飼料に対してマンガンが60mg、鉄が60mg、銅が10mg、ヨウ素が1.2mgです。

 表4点と図1点を含む報告はインド・ハイデラバードの養鶏研究グループ(G.Shyam Sunderを含む7名)ですが、詳細に関心のある方は米国家禽学会の(J. Appl. Poult. Res. 2008. 17:79-86)を参照なさるとよいでしょう。

 余談ですが、日本のテレビ番組などでの食事と栄養では亜鉛の味覚障害のことが話題性として大きく取り上げられているように思いますが、若い人や中年の人で舌の味蕾が亜鉛の少なさで起きるとすれば、その人は普段からの食生活が相当に偏っている場合が多いのでしょう。それを補うのに亜鉛サプリメントだけ余分に摂れば治るという考え方も危険です。ミネラルやビタミン・サプリメントだけ摂っていれば食べなくても大丈夫という安易な考え方は人間にとって一番危険です。食事バランス・ガイド(五訂増補食品成分表2008)にある主食、副菜、主菜、牛乳・乳製品、果物の5グループからなる目安はよくできています。

 亜鉛は免疫機能を改善し、細胞の新生に貢献し、発育を促進します。亜鉛を必須成分とする体内での酵素は200種類以上あることも判っていますから、これだけでも亜鉛の重要性は判ります。牛豚鶏レバー、牛豚の赤身肉、鶏のもも肉のようなダーク・ミート、かきなど食べ物を全体にバランスよく食べていれば、通常、10から15mg程度の亜鉛は摂っています。米国では、成人1日当り摂取量として15mgを推奨していますし、50mg以上の亜鉛を長期間摂る必要があるときは専門医による銅、脂質、免疫機能などをモニターしなくてはいけないとしています。

 亜鉛中毒というのは最近では極まれにしか起きませんが、以前は、古い缶詰を開けたとき缶の内側の亜鉛が溶け出しているのを知らずに、亜鉛を高濃度に含む中身を食べてしまうことにより問題を起したことはあります。

 家畜家禽の場合は、亜鉛の一日当たり推奨量を飼料1kg当たりの量で示す場合が多いのですが、それ以外に生体重1kg当り、1頭1羽1日当りの量などで示す場合があります。どちらかと云えば、米国NRCのビタミンや微量ミネラル類の所要量は、急速に変化してきた時代の流れの中でみると低めになっている場合が多いでしょう。であるからといって何でもかんでも闇雲に余分に足しておけばよいというものでもありません。それはリン排泄などが環境に与える悪影響を考えても判ります。この報告のようにとうもろこし・大豆ミール中心の飼料の場合には、亜鉛をNRCの2倍にするというのは理に適っている面があります(瀨良、2008)。


 
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