アメリカ大豆協会

瀬良英介ニュースレター

瀬良英介の一般業界向け
飼料・畜産トピックス
2008年4月 (182)

乾乳牛のスタフ・オウレウス感染・治癒への薬剤組み合わせの比較

乳牛の乾乳期間の乳房炎への対応はドライ・カウ・トリートメント(DCT)と呼ばれ、乳頭へのチューブによる薬剤注入など色々な方法が米国や日本でも取られています。この報告はアルゼンチンの生乳生産者組合ラボの技術者5名(PURO Laboratory, C. L. Acuna, et al. ?San Antonio de Areco, Argentina)がスタフィロコッカス・オウレウス(黄色ブドウ球菌)についての対応と効果を比較したものです。報告の一部を極簡単に御紹介しましょう。

  ドライ・カウ・トリートメント(DCT)でスタフ・オウレウス(黄色ブドウ球菌)感染に対応処置するのに使用しているクロキサシリン(Cloxacillin)500mg(抗菌作用28日)をクロキサシリン(500mg)+アンピシリン(250mg)(抗菌作用30日)で行っています。また、いずれの処置も乳頭の薬剤注入のみで対応するグループとアモキシシリン(Amoxicillin)を体重1kg当り15mgの割合で筋肉注射をすることと一緒に組み合わせたグループとで分けています。このような方法で新しい乳房内感染を予防する効果について比較したものです。

  最初の第一番目の調査はカナダから連れてきているジャージー牛で2産目、3産目の期間のもので産乳日量が18リットル以上のジャージー牛を使っています。細かい点は割愛しますが、ジャージー牛では最終的に乳頭(分房)数108本がスタッフ・オウレウスに感染している乳頭として選ばれ、その内の乳頭(分房)48本がクロキサシリン(グループ1)で処理され、乳頭(分房)68本がクロキサシリン(Cloxacillin)+アンピシリン(Ampicillin)(グループ2)で処理されています。

第二番目の調査はホルスタイン牛でやはり2産目、3産目のもので産乳日量が30リットル以上のホルスタイン牛を使っています。基本的な方法はジャージー牛の調査と同じですが、調査用の乳頭(分房)数は4区に分けています。グループA(n=126)はクロキサシリン(Cloxacillin)の薬剤注入のみです。グループB(n=46)はクロキサシリン(Cloxacillin)+アンピシリン(Ampicillin)の薬剤注入のみです。グループC(n=16)はクロキサシリン(Cloxacillin)の薬剤注入とアモキシシリン(Amoxicillin)の筋肉注射です。グループD(n=14)はクロキサシリン(Cloxacillin)+アンピシリン(Ampicillin)の薬剤注入、及び、アモキシシリン(Amoxicillin)の筋肉注射です。

  病原体の分離や検体収集方法は全米乳房炎協議会(NMC)の推奨方法に準じています。選択的な分離にはスタフィロコッカス spp(黄色ブドウ球菌属)についてベア・パーカー寒天培地(Agar Bair Parker)を使い、ストレプトコッカス spp(乳房炎連鎖球菌属)についてはエドワード寒天培地(Agar Edward’s)を使い、コリフォルム類(大腸菌類)についてはマッコンキー寒天培地(Agar McConkey)を使っています。

  第一番目の調査の結果では(グループ1)(n=48)でスタフィロコッカス・オウレウス(黄色ブドウ球菌)が治癒できた割合は56.25%でした。スタフ・オウレウスが分離された乳頭(分房)21本については処置後も43.75%が存続していました。(グループ2)(n=68)ではスタフ・オウレウスの割合は55.9%で、処置後に存続していたのは乳頭(分房)30本で44.1%でした。薬剤組み合わせの違いによる有意差はありませんでしたLSD(p ? 0.01%)。 治癒率を産乳次で捉えた結果では(グループ2)の2産目(n=24)で66.6%、3産目かそれ以上(n=44)で50%でした。

  第二番目の調査では、(グループ1)(n=126)の結果がスタフィロコッカス・オウレウスの治癒率では55.5%を示し、処置後も存続した乳頭(分房)数が56本で44.4%でした。(グループ2、グループ3、グループ4)、また、それぞれの比較や相関には違いがありますが、結果として全体の大きな違いはないので割愛します。

  アルゼンチンの生乳生産者組合の技術者グループは、どちらの薬剤の組み合わせを使っても新規の乳頭(分房)感染が起きた割合は認められなかったとしながらも、(グループ2)の臨床乳房炎件数は減ったとしています。他の研究者は、乾乳期間の長さ、乳腺組織内での組み合わせた薬剤の作用期間の長さ、そして、抗生物質の抗菌スペクトラムが絡んでいるとしている点を本報告の技術者グループは指摘しています。

  この調査にあたっての乾乳期間は31日から51日でした。また、双方の薬剤の組み合わせが乳腺組織内で効力を保ったのは4週間でした。この調査での結論としては、スタフィロコッカス・オウレウスに対しての効力は双方の薬剤の組み合わせで似通っていました。加えて、組み合わせた薬剤のはスタフィロコッカス・オウレウス(黄色ブドウ球菌)で感染している乳頭(分房)の治癒を改善しました。

  本論は全米乳房炎協議会(NMC)が2008年冬に行った年次会合の学会録(NMC Annual Meeting Proceedings - 2008 / pp. 254 〜)から御紹介しました。トピックスの第181番がブラジルの酪農農場の乳房炎と黄色ブドウ球菌などについてでしたが、同じ南米のアルゼンチンの生乳生産者組合ラボから同じ菌と乾乳牛について報告しているのは大変に興味のあることです。

余談ですが、日本でも黄色ブドウ球菌や乳房炎連鎖球菌などの問題は小さくありません。乳検の優等生としてランク付けされている酪農家であれば解決済みのことかもしれませんが、その場合でも油断大敵です。通常の酪農家であれば、経営規模の大小に拘らず、乳房炎問題は搾乳牛においても、乾乳牛においても、初産前の育成牛においてもチャレンジとして存在します。現場の獣医や指導員、或いは、飼料販売に携わるセールス・プロパーが苦労する面です。

特に飼料会社の面から見れば、乳房炎は飼料の品質如何に拘らず、乳量が減少するというジレンマがあり、また、生乳を買う側である農協、大手スーパーから見ると高品質の牛乳を消費者に提供できないというジレンマがついて回ります(瀬良、2008)。


 
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