アメリカ大豆協会

瀬良英介ニュースレター

瀬良英介の一般業界向け
飼料・畜産トピックス
2008年4月 (181)

ブラジルの酪農農場での乳房炎薬の特性

乳房炎コントロール・プログラムの重要な部分として乳房炎薬を臨床性と潜在性の面で分離することでブラジル・サンパウロのパウリスタ国立大学、ファイザー動物薬、生命獣医研究所の4名が報告しています。また、2005年にホーとルエグが発表した論文では薬剤相関について臨床ケースの場合の薬剤感受性試験に疑問を呈している点を本報告の研究者グループは指摘していますが、同時に研究者グループとしては感受性試験が乳房炎の病原体疫学の研究面から有用であろうと報告の冒頭で指摘しています。

  本報告での目的は、ブラジルの酪農農場での乳房炎病原体による有病率がどの程度であるかということを測定し、また、感受性パターンを調べることでした。

  酪農農場で生乳品質プログラムに加入しているものは、通常、細菌検査のために乳検が生乳検体を集めています。ラボの名前などは割愛しますが、分析は3箇所のラボで行われました。

全ての地域(4州)での病原体の分布(日本語の注釈をいくつか付けた:瀬良)


微生物

分離件数

スタフィロコッカス・オウレウス???? (黄色ブドウ球菌)
(注:米国では、学術語の場合もスタフ・オウレウスと縮めて云うことがある)

754

31.76

ストレプトコッカス・アガラクティエ?? (乳房炎連鎖球菌)
(注:米国では、学術語の場合もストレプト・アガラクチエと縮めて云うことがある)

388

16.34

スタフィロコッカス・エピダミディス? (表皮ブドウ球菌)

214

9.01

エシェリヒア・コリ???????? (エシェリキア・コリとも発音する)(大腸菌)
(注:米国では、一般的にイー・コーライと縮めて発音する)

208

8.76

ストレプトコッカス・ボボビス (牛の消化管にみられる連鎖球菌属)

150

6.32

クレブシェラ spp? (腸内細菌科に属する菌属の種)

130

5.47

その他のストレプトコッカス spp

95

4.00

ストレプトコッカス・ジスアガラクチエ? (減乳性連鎖球菌)

67

2.82

コリネバクテリウム・ボビス?? (牛コリネバクテリウム)

58

2.44

コアグラーゼ・ネガチブ(陰性、非産生)スタフィロコッカス

55

2.32

シュードモナス spp?? (注:緑膿菌なども同属)

75

3.16

バシラス spp? (桿菌) (注:コレラ菌、結核菌なども同属)
(注:バシルス、 バチルスとも発音する場合あり)

46

1.94

イースト?? (酵母)

40

1.68

ストレプトコッカス・ウベリス (牛の乳房感染症にみられる種)
(注:米国ではストレプト・ユーベリスとも発音する)

25

1.05

エンテロバクター spp?

18

0.76

セラチア・マセランス

14

0.59

ミクロコッカス spp? (牛乳、乳製品などにみられる「小」球菌属)

10

0.42

ファンガス?? (真菌、かび)

0.29

プロテウス spp?  (腸内細菌科に属する短桿菌)

10

0.42

コンタミナンツ??? (不純物)

0.17

エンテロコッカス spp? (腸管内菌、上水、食品の糞便汚染指標菌)

0.13

パスツレラ? spp? ??(注:ペストや敗血症なども同属)

0.13

   合計

2374

100.00

  ブラジルの4州とは、ミナス・ゲラス、パラナ、サンタ・カタリーナ、及び、サン・パウロの4州です。集められた総検体数は2671検体でしたが、そのうち微生物の成長があった検体は上記の2374検体でした。検体は臨床と無症状感染の双方から集め、分析時まで冷凍保存しています。

  微生物学的手順はNMC(全米乳房炎協議会)のラボ・ハンドブックに準じています。ディスク拡散試験で感受性を決定しています。使用した抗生物質は、ペニシリン(Penicillin)、ノボビオシン(Novobiocin)、セフォペラゾン(Cefoperazone)、オキサシリン(Oxacillin)、アモキサシリン(Amoxacillin)、ダノフロキサシン(Danofloxacin)、及び、セフチオファー(Ceftiofur)でした。

  微生物データによれば、スタフィロコッカス・オウレウス(黄色ブドウ球菌)とストレプトコッカス・アガラクチエ(乳房炎連鎖球菌)がブラジルの農場で最も広まっている病原菌であることが示されています(上記の表)。

  感受性データでは、ダノフロキサシン(Danofloxacin)、セフチオファー(Ceftiofur)、及び、セフォペラゾン(Cefoperazone)が最も高い感受性を示し、ダノフロキサシンが85.4%、セフチオファーが76.9%、セフォペラゾンが72.2%でした。最も多く分離されていたのはスタフィロコッカス・オウレウス(黄色ブドウ球菌)ですが、最も感受性が高かったのはセフチオファー(Ceftiofur)の85.6%、及び、セフォペラゾン(Cefoperazone)の83.7%でした。

  ブラジルの大部分の牛群に与えられた大きなチャレンジは伝染性乳房炎ですが、上記の表にあるようにスタフィロコッカス・オウレウス(黄色ブドウ球菌)とストレプトコッカス・アガラクチエ(乳房炎連鎖球菌)のコントロールを如何に改善し徹底するかということが伝染性乳房炎を減らし、更に、生乳の品質を高めることになります。

  これは全米乳房炎協議会(NMC)が2008年冬に行った年次会合の学会録(NMC Annual Meeting Proceedings - 2008 / pp.218〜)から御紹介したものです。論文そのものは大変に短いのですが、調査した農場の病原菌の分離数や有病率が一覧表になっているのが面白く示唆に富んでいます。詳細に関心のある方は、ブラジル国サン・パウロのファイザー動物薬(F. HoeやF. Franco)やパウリスタ国立大学(L. H. Cruppe)に問い合わせるのも一法でしょう。

  余談ですが、日本でも乳牛、育成牛、子牛、繁殖牛などを飼育している農場では、牛の乳房炎は表面的(臨床ケース)であれ、潜在的(無症状感染)であれ、経済的な損失を含む問題を抱えている部分です。したがって、現場の獣医や指導員、或いは、飼料販売に携わるセールス・プロパーは苦労している面でしょう。乳房炎を無くすという管理は地味ながら不断の努力が必要不可欠なことは云うまでもありません。

飼料会社の面から見れば、乳房炎は高品質の飼料であってもそれに伴う乳量が出ないというジレンマがあり、生乳を買う側から見ると高品質の牛乳を消費者に提供できないというジレンマがあります(瀬良、2008)。


 
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