ブロイラー胸肉のドリップ・ロスはリジン・レベルを上げて改善
フランスでの最新の研究の結果を簡単に指摘しますと飼料のリジン・レベルを上げるとブロイラー胸肉のドリップ・ロスが相応に減り、pHも上昇するというものです。
報告は、フランス国ヌーザリーの国立農業研究所(インラ)の家禽研究部門やパリの味の素ユーロリジンの3名(ベリ、ベスナール、レランドー)が発表したものです。
飼料中リジン濃度を上げることへの反応を雄のロス308系統のブロイラーを1584羽使い、21日令〜42日令の間でのハウス飼育試験で密度2羽で行っています。試験は8ファクトリアル処理法で行っています:密度2羽(22羽、或いは、44羽ブロイラー/ペン当り1.7m平米)×4種の真のリジン消化レベル(TD Lys)でリジン・レベルが0.83%, 0.93%, 1.03%, 1.13%です。各処理についての反復試験は6回です。
供試鶏は21日令と42日令に個々の個体を測っています。飼料摂取はペンごとの摂取量を記録しています。体重増加と飼料要求率は試験期間全体で計測しています。各処理から42羽は42日令で解剖しています。貯蔵24時間後の最終的なpHとドリップ・ロスは胸筋(胸肉全体)で計っています。飼育密度は飼料摂取量に逆作用しています。つまり、ペン当り22羽と44羽密度では、21日令から41日令での飼料摂取日量が、それぞれ169g±1g/日、及び、160g±1g/日で(p<0.05)、また成長速度の増体日量は、21日から42日令で、それぞれ97.4g±0.5g/日、及び、91.0g±0.7g/日です(p<0.05)。そして飼料要求率は、前記の順序でそれぞれ1.730±0.008、及び、1.760±0.006です(p<0.05)。
飼料摂取を除いてブロイラーの飼育密度と飼料中リジン・レベルに相互作用はありませんでした。飼料中の真の消化性化リジン(TD Lys)を0.83%から0.93%に増やすことにより成長速度は91.8g±1.6g/日から95.5g±0.8g/日へと増えましたし(p<0.05)、飼料要求率も1.783±0.008から1.742±0.009へと改善されました(p<0.05)。そして胸肉の歩留まりは、前記の順序でそれぞれ22%±0.1% から22.7%±0.2%へと増えました(p<0.01)。飼育成績と屠体組成形質は、真の消化性リジン(TD Lys)が0.93%以上については有意な改善がありませんでした。
然し、最終的な胸肉のpHは真の消化性リジンが0.83%のときのpH 5.91から真の消化性リジンが1.03%のときのpH 6.02へと有意に上がりました(p<0.05)。そして、ドリップ・ロスも相関関係的に1.10%±0.06%から0.85%±0.03%へと下がりました(p<0.05)。
研究者グループは、こららの結果からアミノ酸要求の定義や胸肉のpH変動に関する代謝経路などについて新しい道を開くものとしています。
スターター、グローワー、及び、試験飼料設計や組成より
原料 |
|
フィニッシャー試験飼料 21〜42日令 |
スターター |
グローワー |
真の消化性リジン(TD Lys)はフィニッシャー試験飼料中% |
0-7日令 |
8-20日令 |
0.83% |
0.93% |
1/03% |
1/13% |
玉蜀黍 |
40.63 |
24.23 |
37.52 |
37.52 |
37.52 |
37.52 |
小麦 |
10.00 |
30.00 |
18.00 |
18.00 |
18.00 |
18.00 |
大豆ミールCP48% |
30.00 |
25.00 |
21.00 |
21.00 |
21.00 |
21.00 |
全脂大豆 |
12.00 |
12.00 |
8.58 |
8.58 |
8.58 |
8.58 |
コーンスターチ |
--- |
--- |
0.38 |
0.255 |
0.129 |
0.004 |
菜種(全粒) |
--- |
--- |
5.00 |
5.00 |
5.00 |
5.00 |
大豆油 |
3.00 |
4.50 |
4.00 |
4.00 |
4.00 |
4.00 |
炭カル |
1.00 |
1.00 |
0.60 |
0.60 |
0.60 |
0.60 |
2リンカル |
2.00 |
1.80 |
1.70 |
1.70 |
1.70 |
1.70 |
Lトレオニン |
--- |
0.07 |
0.13 |
0.13 |
0.13 |
0.13 |
LリジンHCL |
0.17 |
0.17 |
--- |
0.125 |
0.251 |
0.376 |
DLメチオニン |
0.25 |
0.26 |
0.32 |
0.32 |
0.32 |
0.32 |
微量ミネラル・ビタミン、食塩、添加物 |
0.95 |
0.97 |
0.97 |
0.97 |
0.97 |
0.97 |
ベントナイト |
--- |
--- |
1.80 |
1.80 |
1.80 |
1.80 |
計算値 |
|
ME kcal/kg |
3,028 |
3,120 |
3,162 |
3,162 |
3,162 |
3,162 |
CP |
22.6 |
21.1 |
18.5 |
18.7 |
18.8 |
19.1 |
Lys |
1.33 |
1.23 |
0.94 |
1.05 |
1.14 |
1.25 |
Met |
0.54 |
0.54 |
0.56 |
0.56 |
0.55 |
0.56 |
Met±Cys |
0.89 |
0.88 |
0.87 |
0.87 |
0.86 |
0.88 |
Thr |
0.84 |
0.83 |
0.80 |
0.81 |
0.80 |
0.81 |
Trp |
0.27 |
0.26 |
0.23 |
0.22 |
0.23 |
0.23 |
Ca |
1.12 |
1.07 |
0.89 |
0.89 |
0.89 |
0.89 |
有効P |
0.44 |
0.42 |
0.40 |
0.40 |
0.40 |
0.40 |
注、瀬良:原文中の飼料1kg当り微量ミネラル、ビタミン、食塩、添加物などの量は省きました
前述のように胸筋(胸肉全体)の最終pH値は屠殺24時間後(貯蔵温度2℃)にスペイン国バルセロナのクリソン・インストラメンツ社製の携帯用pHメーター(モデル506)のガラス電極棒を胸筋/胸肉(pectoralis major)が最もぶ厚い箇所に突き刺して測定しています。ドリップ・ロスは屠殺24時間後に胸筋/胸肉の重量測定を行い、直ちにプラスチック・バッグに収納して吊り下げ、温度2℃で4日間貯蔵した後に吸収紙でふき取り、胸筋/胸肉の重量測定を再度行っています。その差の割合は、初回の重量測定値に対してドリップ・ロス%になります。
尚、飼料設計などを御参考までに紹介するときに毎回指摘していることですが、上記の飼料設計を現場でそのままお使いになった場合、成績などの結果については、研究者グループ、トピックス執筆者、及び、アメリカ大豆協会は一切の責任を負えないことを御了承ください。
この研究報告は表2点と興味あるディスカッションからなる5ページの論文ですが、詳細に関心のある方は米国家禽学会誌(2008 Poultry Science 87:480-484)を参照なさることをお勧めします。
余談ですが、この報告はドリップ・ロスなどや胸肉のpH上昇の角度から捉えた興味ある研究です。前述のようにフランスの国立農業研究所(インラ)家禽部門が味の素ユーロリジンとの協同で行った試験研究ですが、飼料設計に脱皮大豆ミール、全脂大豆、大豆油を使っているので微量栄養素などを省いた設計を上記に御紹介しました。原文中、真の消化性リジン(TD Lys)はサウヴァンらの報告(Sauvant et al., 2004)を基に計算したとあります。また、上記の設計のLリジンHCLはコーンスターチとの置き換えで使っていることを研究者グループは指摘しています。更に、研究者グループはディスカッションの中でデータから受ける示唆では、飼料要求率、成長、体組成成績などを勘案したとき、リジン・レベルは0.93%と1.03%の間であると推測できるとしています。そして胸肉の形質を考慮した場合は少なくとも1.03%であろうとしています。
ドリップ・ロスは日本の関連業界でも関心が高いので今後の国内外でのリジン販売価格や大豆ミールの需給と市況などとの絡み合いの中で極めて示唆に富んでいると思われます(瀬良、2008)。
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